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ECBが量的緩和政策を年内に終了することを決定しました。一方、FRBは政策金利を引き上げ、順調に金融正常化を突き進んでいます。この中で取り残されたのは日銀です。今回は、量的緩和・金融正常化によるFX・為替相場への影響を解説します。

現在の為替の状況

2018年6月13日

米連邦準備理事会(FRB)の政策金利引き上げ

フェデラルファンド(FF)金利誘導目標を0.25%引き上げ
年1.75%~2.00%に設定

年内にさらに2回利上げ
18年通年では4回の利上げになる

と発表しました。

2018年6月14日

欧州中央銀行(ECB)が量的緩和(QE)終了を決定

ラトビアの首都、リガで理事会を開き、量的緩和政策を年内に終了することを決めた。

現在は、月300億ユーロ(約4兆円)のペースでの資産買い入れを実行中
新規購入額を10月以降は150億ユーロに減額
年末で打ち切り

ただし、金利に関しては

「少なくとも2019年夏までは現在の水準にとどまる」とし

利上げ開始に慎重な姿勢を示した。

米ドル/円

ユーロ/円

ユーロ/米ドル

為替の状況

米ドルの利上げ
米国の指標好調「米小売売上高」「輸入物価指数」「新規失業保険申請件数」

→ 米ドル全面高

ユーロは量的緩和終了も、利上げはしないという見通しの発表

→ ユーロ全面安

考察

お金は、川の水のように「金利の低い国」から、「金利の高い国」に流れる

というのが原則ですので

  • 金利を上げた米ドルにお金が流れ → ドル高
  • 来年夏まで利上げをしないといったユーロからお金が離れ → ユーロ安

という結果になっているのは当然です。

ECBが量的緩和政策を終了の背景

ドラギ総裁の理事会後の記者会見での発言要旨

(金利が少なくとも2019年夏にかけて現行水準にとどまる、との声明の文言に関し

「夏にかけて」というのは9月という意味かとの質問だが、もし9月という意味であれば、実際にそう書いていただろう。われわれが言いたいのは、経済が好調を呈すると同時に不透明性が増す中で今回の決定を下しており、「夏にかけて」というのは意図的に時期を特定しないということだ。

(イタリアとユーロ離脱の可能性について聞かれ)

不可逆的なことが存在するかどうかを議論するのはまったく割に合わない。それは損害をもたらすだけであって、双方に同じことが言える。以上だ。

利上げを実施すべきか、さらに利上げ実施の時期について討議しなかった。

域内の物価圧力を一段と押し上げ、中期的な総合インフレ動向を支えるため、なおかなりの金融刺激策が必要だ。

と、

  • 量的緩和政策を終了 → タカ派的な発言
  • 金利は2019年9月まで上げない → ハト派的な発言

であり

「金融緩和(買い入れ策)は終了させるが、急激な利上げは考えていない。」

というバランスを取った発言になっています。

欧州中央銀行(ECB)には、日本や米国と違った量的緩和(QE)に関する問題があるから、この結論に至っているのです。

欧州中央銀行(ECB)では、量的緩和(QE)を続けている間に資産が膨れ上がっています。

これ以上買い入れを続ければ

  • 買いすぎて市場に出回っていない品薄の「ドイツ国債」(経済が好調なので投資家に人気がある)
  • 誰も買わなくて市場に余っている「イタリア国債」(経済が不安定なので投資家が敬遠する)

後者を欧州中央銀行(ECB)は「選ばざるを得ない」ということになってしまうのです。

  • イタリアの政局の混乱
  • 景気拡大のペースが鈍っている

ことなどから、本音を言えば欧州中央銀行(ECB)も、「もう少し国債買い入れは続けたい。」というのが間違えありませんが・・・

EU特有の事情により、これ以上「買い入れ」を続けられない。

ので、仕方なく

  • 「買い入れ」は辞める
  • 「金利」はそのまま

という妥協策を選んだということが透けて見えてくるのです。

また、同時にイタリアの政局が不安定になり、ポピュリズム政権が誕生したことも、この決定にある程度の影響を与えていると考えられます。

保護主義、大幅減税、EU離脱、移民排斥・・・

というポピュリズム政権が欧州全体で増えていけば、当然、イギリスに続いてEUを離脱する国が増えていきます。

イタリアのポピュリズム政権の誕生を契機に、ほかの国に「EUは景気が好調だ。全く問題ない」という権勢を行う必要性があったのではないかと考えられます。

今回の量的緩和(QE)終了は、難しい判断の中で欧州中央銀行(ECB)が行ったものと推察されます。

今後のFX・為替相場への影響はどうなるのか?

当然、ユーロ安・ドル高の局面が少なくとも、1年は続くのではないでしょうか。

金利は低金利の国から、高金利の国に流れます。

欧州中央銀行(ECB)の国債金利は、大口の「買い手」がいなくなるので金利上昇に向かいます。

しかし、「政策金利は2019年夏(9月?)まで利上げしない。」ということを明言しているので、大幅な金利上昇は見込めません。

一方で、米連邦準備理事会(FRB)は

  • 6月14日でフェデラルファンド(FF)金利誘導目標を0.25%引き上げ、年1.75~2.00%のレンジに設定
  • 利上げは3月に続き今年2度目
  • 2018年の利上げ通年では4回(後2回の利上げがある)
  • 2019年の利上げ見通しは3回

と、順調な利上げペースを維持しています。

簡単に言えば

こっから1年先ぐらいまでは

欧州中央銀行(ECB)と米連邦準備理事会(FRB)の金利差がどんどん広がっていくことがほぼ確定している

という状態です。

よほどの大ニュースがない限りは、この流れは変わらないでしょう。

しかも、EUには

  • イタリア・スペインなどの経済が不安定な南欧の国を抱えていて
  • ポピュリズム政権の台頭による「EU離脱」の火種がくすぶっているのです。

さらにスタッフ見通し2018年成長見通しの下方修正なども相まって

ECBスッタフ予想

インフレ率予想

2018年1.4→1.7%へ上方修正
2019年1.4→1.7%へ上方修正
2020年1.7→1.7%

成長率予想

2018年2.4→2.1%に下方修正
2019年1.9→1.9%
2020年1.7→1.7%

かなり高い確率で、ユーロ安が1年以上は続いていくのではないか?

と筆者は予想します。

逆に好転する材料がほとんど見当たらない状態です。

日本の金融緩和はどうなるの?

執筆時点の今日(2018年6月15日)、日銀は金融政策決定会合を開き、当面の運営方針を発表します。

  • 物価低迷
  • 長期化する低金利の副作用

に対する黒田東彦総の見解が注目されています。

しかし、実際には

日銀の金融緩和を今止めることはほぼ不可能

と考えられます。

なぜなら、日銀は、欧州中央銀行(ECB)と米連邦準備理事会(FRB)と違って

国債だけでなく、株も、不動産も、買い続けているからです。

仮に、日銀が

「もう株を買い支えるの辞めます!」

と発表したら、多くの投資家が日本株を売却してしまうでしょう。

安倍政権の唯一の成果である株高が崩れてしまったら、政権自体も持たないのは明白です。

また、株価が下落すると

巨額な資金を株式投資に投入している年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)に巨額な損失が発生してしまいます。

年金の原資が減る

という危機的な状態になってしまうのです。現時点でも社会保障のお金が不足していると言っている中で、巨額の運用損は大きな問題になってしまうでしょう。

日銀は、リスクがあることを呑み込みながら、国債・株、不動産の買い入れを続けるしか選択肢はなくなっているのです。

国債買い入れが続く限り

ドル高/円安

になる可能性が高いと言えます。

米ドルは、利上げを繰り返し、日本円は一向にその気配すら作りだせない状況

です。

日米の金利差も、拡大する一方なのですから、ユーロほどではないにしろ

ドル高/円安

が見込まれるのです。

ただし、一度「国債買い入れ」をストップすることになれば

今までのお金が逆流します。

  • 株安
  • 不動産安
  • 国債金利上昇
    ・・・

と、いろいろな問題が噴出するリスクがあるのです。

作られた「円安」も、ここで終わってしまう可能性が高いと言えるでしょう。

日銀の金融緩和は、いつでも続けられるものではありません。

Bloombergの記事によると

調査で、副作用の累積や技術的な限界を考慮した上で、長期金利0.0%、短期金利マイナス0.1%の金利操作がいつまで持続可能か聞いたところ、1年が8人(18%)、2年が12人(27%)、3年が13人(29%)と、2年以内に限界が来るとの見方が半数近くに達した。

とあります。

日銀の国債の保有額も、2018年末には6割を超えます。

2年後には、金融緩和の方針転換が迫られる状況になっている可能性が高い

のです。

まとめ

ECBが量的緩和政策を終了。FRBは政策金利を引き上げ金融正常化を進める。取り残された日銀。FX・為替相場への影響とは?

  • ECB → 量的緩和は2018年末に終了するが、2019年9月まで金利維持
  • FRB → 順調に2018年は4回利上げ、2019年は3回利上げ見込
  • 日銀 → 身動きが取れず、金融緩和を続けるしか選択肢がない

状態ですので

  • ドル高
  • ユーロ安
  • 円安

の全体的な流れが続くと考えられます。

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