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イタリアで反ユーロ政権が誕生し、ユーロの全面安が続いています。「この状況はなぜ起こったのか?」「今後の為替相場はどうなるのか?」解説します。

イタリアの反ユーロ政権誕生

イタリアでは、3月4日の総選挙がありました。

総選挙では、与党の「民主党」が後退し、過半数を得る陣営が出ませんでした。

  1. 総選挙で32%の得票率を得た反エリートの「五つ星運動」
  2. 総選挙で18%の得票率を得た反移民を掲げる極右政党「同盟」

数日間に及ぶ協議を経て、連立政権に合意した形となります。

「五つ星運動」「同盟」は、ともにポピュリスト(大衆迎合主義者)政党となります。

ポピュリスト(大衆迎合主義者)とは

一般大衆の利益や権利、願望、不安や恐れを利用して、大衆の支持のもとに既存のエリート主義である体制側や知識人などと対決しようとする政治姿勢のこと

を言います。

米国トランプ大統領のイタリア版だと解釈すれば、かなりわかりやすいはずです。

  • 大型の所得減税
  • 最低所得保障
  • 法人税の減税
  • 年金支給年齢の引き上げ撤回
    ・・・

など、国民にとって耳障りの良い「政策」を並べて、票を獲得したのです。もちろん、「財源の裏付け」の見通しには言及されていない実行力の怪しいものばかりです。

政策はこれだけではなく

  • 不法移民の強制送還
  • EUの対ロシア制裁解除

など、反EUを全面に押し出した政策も掲げています。

イタリアでは、「五つ星運動」「同盟」の連合による反EU、反ユーロ政権が誕生した。

ということになります。

セルジオ・マッタレッラ大統領は、サボーナ氏の起用を拒否

イタリアの政治空白を打開すべく、「五つ星運動」「同盟」は、ジュゼッペ・コンテ氏を次期首相候補に推薦しました。

次期首相であるジュゼッペ・コンテ氏は、「五つ星運動」「同盟」にも属さない候補として、指名されましたが、政治経験の無い経済学者であるため、世界的にも、その政治的手腕は疑問視されている人物です。

コンテ氏は、当然、次期首相として閣僚人事「組閣」をすることになります。

しかし、セルジオ・マッタレッラ大統領は、コンテ氏の閣僚人事「組閣」案で、サボーナ氏の経済相への起用を拒否したのです。

Paolo Savona(パオロ・サボーナ)氏

  • 82歳
  • 1990年代に工業大臣を歴任
  • エコノミスト
  • イタリア金融業界では著名人
  • 緊縮財政の反対派
  • 政府のEUへの拠出金案に反対

イタリア日刊紙「La Stampa」で

「イタリアはユーロから離脱する準備を始めるべきだ」

と語る、反ユーロ/反EU派なのです。

政治経験の無い経済学者のコンテ氏は組閣を断念しました。マッタレッラ大統領は国際通貨基金(IMF)元エコノミストのカルロ・コッタレッリ氏を招致し、非ポピュリスト政権の首相として組閣を依頼する可能性が高まっているのです。

イタリアの法律では、大統領は閣僚の任命を拒否する権利を持ちます。セルジオ・マッタレッラ大統領が、反ユーロのサボナ氏の任命を拒否すること自体には問題はありません。

しかし、反ユーロ/反EUを掲げるポピュリズムの政党である「五つ星運動」「同盟」の連立政権は、この決定を不服として、「五つ星運動」のディ・マイオ党首はイタリア憲法90条に基づき大統領の弾劾を要求しました。

セルジオ・マッタレッラ大統領

「次期政権の組閣の方法を変更できる私の立場に異議を述べられる人はいない」

「五つ星運動」のディ・マイオ党首

「今晩以降、この国の制度や法を信じるのは本当に難しくなる」
「受け入れられない」
「これは前例なき制度の破壊だ」

と、どちらも譲らない状況に陥っています。

弾劾投票で賛成票が過半数となれば、イタリアの憲法裁判所が大統領を弾劾するかどうかを決定することになります。

また、7月29日に再選挙の可能性が浮上しています。

イタリアでは政治的混乱に収束の目途が立っていない

という状況にあるのです。

FX・為替相場の状況

ユーロ/米ドル

2018/4/20:1.23
2018/5/30:1.15

6.6%ユーロ安

ユーロ/円

2018/4/26:133.25
2018/5/30:125.47

5.9%ユーロ安

状況としては

全面ユーロ安

という形になっています。

  • 「五つ星運動」「同盟」の連立政権自体が反EU、反ユーロであること
  • 個人税や法人税の減税、年金支給年齢の引き上げ撤回の財源が不透明であること
  • 再選挙により、ユーロ離脱、EU離脱へつながる可能性があること

などを懸念し、外国人投資家を中心にユーロが売られている状況なのです。

とくにイタリアの政府債務の残高は国内総生産(GDP)比130%を超え、ユーロ圏でギリシャに次ぐ高さとなっています。その中で、バラマキ政策を推し進めるポピュリズム政権が誕生し、ユーロ離脱、EU離脱の可能性もあるとなると・・・

イタリアの破綻リスクが増大するのは間違えありません。

イタリアの10年もの国債利回り

イタリアの金利は、2018年5月30日時点で3.178%に上昇しています。それだけ金利を付けないと買い手が付かない状況と言い換えることができます。

マッタレッラ大統領は

「イタリア人投資家や国外投資家に不安を感じさせ、イタリアとドイツの10年国債の利回り差:スプレッドを拡大させている。」

格付け会社のムーディーズは

「イタリアの次期政権が財政政策で公的債務比率を持続可能な低下軌道に乗せることができなければ、イタリアの長期債務格付けを、投資適格としては最低水準の「Baa3」に引き下げる可能性がある」

ビスコ・イタリア中銀総裁は

「政局混迷が深まる中、市場でイタリアに対する信任が失墜の「瀬戸際」にある」

と警告している状態です。

イタリアは、ドイツ、フランスに次ぐ、ユーロ圏3位の経済国であるので、当然ユーロにも影響が及びます。

それだけではなく、イギリスのEU離脱(ブレグジット)に続き、イタリアもEUを離脱する可能性があるということになれば、ユーロ自体の信用が低下するのは避けられません。

ユーロが全面安になっているのは、当然のことなのです。

今後のFX・為替相場はどうなるのか?

次の展開としては

仕方なく、マッタレッラ大統領が招致した元IMF幹部のコッタレッリ氏が組閣をする場合は、短期政権、再選挙となる可能性は高く、その場合現連立勢力「五つ星運動」「同盟」が逆に勢力を増す公算が高いとされています。

  • バラマキ政策
  • 反ユーロ/反EU

が加速する公算が高く、再選挙でも、EU離脱が争点になる可能性があります。

財政危機のお荷物国家「イタリア」がEUから離脱すれば、EUとしては「プラス」だ。

という考え方もありますが・・・

筆者の考えでは

イギリスに続き、イタリアが離脱すれば、次々と離脱者が起こるEUは組織として破綻している。

と見る投資家の方が多いのではないかと推測します。

さらに言えば

イタリアは、単一通貨ユーロ採用国であるため、金利変更も、金融緩和もできず、独自通貨もないため、すぐにEU離脱もできない状況

でもあるのです。

イタリアの破綻リスクは高く、このゴタゴタが続けば続くほど、ユーロ安が継続する可能性が高い

と考えられます。

トランプ大統領に触発されたように、欧州各国ではポピュリズムが台頭してきています。ポピュリズムも台頭はいい面も、悪い面もありますが、EUという枠組みにがんじがらめになっている状況でのポピュリズムの台頭は、EUの枠組み崩壊につながる大きな要因となりうるのです。当然、ユーロの信用も大幅に下がる可能性があります。

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