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9月21日、日銀は金融政策決定会合で金融政策の目標を国債買入れなどの「量」から「金利」に転換することを決めました。ちょっと聞いただけではわかりにく日銀の発表ですが、海外FXにはどのような影響があるのでしょうか?

金融緩和と為替の関係をおさらい

市場にお金が出回ると、お金の価値は相対的に下がります。

  • 金融緩和をする → 通貨安(円安)

になるのです。逆に

  • 金融引き締めをする → 通貨高(円高)

になります。

  • 政策金利を引き下げる → 市場にお金が出まわる(金融緩和) → 円安

を狙ったのが日銀のマイナス金利であり、逆にアメリカのFRBは

  • 金利引き上げ → 市場のお金を吸い上げる(金利引き締め) → ドル安(円高)

を行っています。※9月は見送りました。

実際にはもっと複雑ですが、大枠は為替と金融緩和の関係はこのようになっています。

単純に日銀は

金融緩和による円安誘導(国債買入れ・マイナス金利) → 輸出企業の売上を伸ばす → 株価上昇・企業収益の改善 → 従業員の給料アップ → 消費増加 → 物価上昇 → インフレに

というアベノミクスを実現するための金融緩和ということをここ2年以上続けてきたのです。

しかし、一時的に円高、株価上昇はしたものの、インフレとは程遠い状況にいるため、今回の金融政策決定会合で「総括検証」を行い、方針の変更を余儀なくされたのです。

「総括検証」の内容まとめ

物価上昇率2.0%が実現できていない理由の検証

  1. 原油価格の下落
  2. 新興国経済の減速と国際金融市場の不安定な動き
  3. 消費税率引上後の需要の弱さ

としています。

簡単に言えば

  • 原油価格の下落 → 世界経済の悪化の要因になりうるもの
  • 新興国経済の減速 → 中国経済の成長率の減速 → 世界経済の悪化の要因になりうるもの

どちらも、思った以上に世界経済の悪化が予測される要因ですので、リスクオフの動きで円が買われてしまい、日銀の思惑とは違い、円高に振れてしまうのです。

結局、リスクオフで買われてしまう日本円は海外の経済動向、景気動向の影響を受けやすく、日銀のコントロールできる部分はたかが知れていたということを如実に表しているのです。

  • 消費税率引上後の需要の弱さ → 増税による消費の冷え込み

当たり前なのですがアベノミクスで給料が上がる前に増税をしてしまったため、消費自体が冷え込んでしまった結果、牛丼チェーン店やマクドナルドを見ていればわかりますが、価格を高くしたら売上が下がり、結局デフレ時代の価格に戻して、値下げをしているような状況です。

政権交代前に決まっていたこととはいえ、増税のタイミングが最悪だったと言わざるを得ません。

イールドカーブ・コントロール(長期金利ターゲット)導入

イールドカーブ・コントロール(長期金利ターゲット)とは

これまで7年~12年程度としていた買い入れる長期国債の平均残存期間を撤廃して、10年物の国債金利を0%というターゲットを置いて買い入れを進めて行く施策です。

簡単に言うと

国債というのは償還期間(お金が戻ってくるまでの期間)が2年、5年、10年、20年、30年、40年といろいろあるのです。

今までは7年~12年のものを中心に国債買入れをしていたので、買われてしまう10年もの国債金利の下がり幅が大きく、マイナス金利に突入していたのです。

長期の国債金利が買われ続けてしまうと、10年、20年、30年、40年ものの国債金利が下がり、銀行や退職金などを運用する会社、年金基金の資金運用が困難になってしまうデメリットが発生します。とくにメガバンクや地方銀行は日銀のマイナス金利導入後、軒並み経常利益を落としており、日銀に対する反発も膨らんでいたのです。

しかし、「国債買入れをストップする」と言ってしまえば、それこそ日銀の打ち手がなくなったことを意味してしまうので、円高を加速させてしまいます。

  • 国債買入れを継続する → 円安誘導は続ける。= 投資家に「株価は大丈夫ですよ。」
  • 長期の国債金利を上げる → 銀行や年金基金への配慮 = 銀行に「マイナス金利でこれ以上損させませんよ。」

を同時にするために

7年~12年のものを中心に国債買入れをするのではなく、10年金利や20年金利に対して誘導目標の金利が設けられ、長期国債の購入量や購入対象年限が調節するのです。

短期の国債買入れを増やす + 長期の国債買入れを減らす = 今までで通りの量(保有残高の増加額を年間約80兆円程度)

「国債買入れの量は維持しつつも、長期の国債金利を上げますよ。」

という妥協の産物がイールドカーブコントロールなのです。

イールドカーブは、縦軸を「債券の利回り」、横軸を「債券の残存期間(満期日までの期間)」として、両者の関係を表す曲線のことを意味するグラフですので、イールドカーブを極端にすること(スティーブ化)が今回の目玉施策ということになります。

日銀の思惑としては

  • 投資家に対して → 国債買入れは物価2.0%上昇するまで続けますよ。
  • 金融機関に対して → 長期金利は上昇するように動きますよ。

と、どちらにもいい顔をするだけの八方美人戦略でしかないのです。

今後のFXへの影響は?

イールドカーブ・コントロール(長期金利ターゲット)は簡単じゃない!

10年もの国債金利を日銀が「0.0%でお願いします。」と言って決められるものではありません。

国債金利はあくまでも、売買の結果で金利が決まってきます。

仮に金利が高い状態であれば、日銀が買い手となれば良いだけなので、金利を下げることはある程度意図的にできると思います。

一方で、金利が低い状態にあるのにも関わらず金利を上昇させるためには、売り手が増えなければならないので日銀は手が出せません。

結果的に、すでにマイナス金利になっている10年もの以上の長期の国債金利をコントロールして狙った金利にするのは簡単なことではないのです。

銀行は「短期国債は大幅なマイナス金利」「日銀に預けるとマイナス金利」だとしたら「長期国債を買う」という判断をする可能性が高いので、結局長期国債の買い手が増えてしまい、金利低下圧力が高まってしまいます。

だとすれば金利はいつまでたっても、狙った0%に到達しません。コントロール不能に陥るのではないでしょうか。

ETFの買入れ倍増で円高局面でも株価は一定ラインを保っている

日銀は7月に上場投資信託(ETF)の購入を倍増させる方針を打ち出しました。

結果として、円高が進んでいますが、それほど株価が落ちていないのです。

日銀の円安誘導に対する切迫感が薄くなったといえます。

結局、国債買入れの切迫感がなくなったということは「円高になったから追加緩和をする」ということとはつながりにくくなったと考えられるのです。

実質的な金融引き締め!?

  • 長期金利はコントロール不能
  • 国債買入れは量ではなく、金利ターゲットに
  • インフレ率2.0%は難しいという言い訳を並べた
  • ETFの購入で円高でも株価はそれほど下がっていない

ということは・・・国債買入れの量は維持するとしたものの、実質的な金融引き締めに近いものと考えられます。

日銀にはカードが残っていないことが明らかになったと言ってもいいでしょう。

  • 量的緩和が限界
  • マイナス金利の拡大も金融機関に気を使わなければならないことを露呈した

今後の為替の動きとしては

円高に対抗する日銀の力が弱まったため、円高が進むことが予測される

のです。

米ドル/円で見れば、FRBの金利引き上げによって一時的に円安になることもあるかと思いますが、世界的な経済危機が深刻化しているのは事実ですので、円高圧力が強いのが現状です。

できるとすれば、マイナス金利の拡大ぐらいなものですが、今回の総括では金融機関への配慮もかなりしている様子ですので、簡単には導入できないというのが日銀の本音でしょう。

日銀の「総括検証」後の市場の反応が薄いのは、投資家に耳障りのいいことばかり言っていますが、大多数が発表が実現性に乏しく、日銀の限界を露呈した印象の方が強いからなのです。

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